daisuke fukushi

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プロローグ
Prologue

タイポグラフィの世界をより深く掘り下げてみようと,ここでは「建築様式と書体」というテーマをもとに,同じ時代背景に生まれた二つの造形について考察したいと思います。このテーマはタイプフェイス・デザイナーであるアドリアン・フルティガーの著書『図説 サインとシンボル』(研究社)を読んでいる中から想を得たもので,歴史的な変遷の中で文字の形が変化してきたことと,その各時代の建築様式に類似性があるという例を知ったことがきっかけでした。
文字について研究を続けていく中,その形象が必ずしもそれを設計した人の自己表現や恣意性から生まれるわけではなく,時代の流行や様式,また技術の進歩によっても形を変えてきたという側面があること,つまりそれが,時代性の反映された造形物であるということを学びました。このような捉え方は,近代建築の巨匠の一人とされるミース・ファン・デル・ローエの言葉にあった「建築は時代の本質を表現する」 1 というものや「時代の意志」 2 という表現からも連想することができます。
文字という造形物がどのような時代に,またどのような景色の中で育まれてきたのか。それを知ることがタイポグラフィを学ぶ上で大切なことだとすると,文字の形が生まれたその時代の建築様式と照らし合わせて考えてみることで,より深い理解が得られるのではないでしょうか。

1|ブレーク 2003,p. 80
2|スペース 1988,p. 54



Date: 160915

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